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京都地方裁判所 昭和48年(行ウ)1号 判決 1977年3月04日

原告 禹明均

被告 上京税務署長

訴訟代理人 宗宮英俊 森野満夫 棚橋満雄 ほか一名

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判<省略>

第二当事者の主張

一  請求原因<省略>

二  請求原因に対する認否<省略>

三  被告の主張

1  原告の昭和四五年分の総所得金額及び分離短期譲渡所得金額は次のとおりである。

(一) 総所得金額((1)+(2)+(3)) 一五〇七万一五六〇円

(1) 事業所得金額 一四二五万一五六〇円

(2) 不動産所得金額 四二万円

(3) 給与所得金額 四〇万円

(4) なお、原告はパチンコ機械入替による譲渡損失三五六万四三八二円があると主張するが、原告の昭和四五年分の所得税の確定申告の所得金額欄中の総所待金額の記載欄に、総合譲渡所得金額△三五六万四三八二円(△印は赤字であることを示す)と記入されていることにつき説明を求めた際、原告は「土地譲渡による損失であるから、右記入は誤りで、分離短期譲渡所得金額欄に記入すべきであつた。しかも、右金額は△六九万一一一二円である」と申立て、その計算過程を記載した明細書を提出したものであり、原告の本訴における主張は、申告時における主張事実に反する。

(二) 分離短期譲渡所得金額((1)-(2))一〇二八万六五九〇円

(1) 収入金額 七〇六五万六三〇〇円

(2) 取得費及び譲渡に要した費用 六〇三六万九七一〇円

内訳(取得価格、仲介手数料、不動産取得税、登録手数料、整地料、譲渡費用)

(3) なお、原告は借入金利息一一〇七万七八八二円を取得費に算入すべきであると主張するが、借入金利息は分離短期譲渡所得金額の計算上収入金額から控除すべき所得費ないし譲渡に要した費用にはあたらない。すなわち、所得税法三八条一項は、譲渡所得金額の計算にあたり資産の譲渡による収入金額から控除する取得費を資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額に限定しているが、法が取得費を限定した趣旨は、譲渡所得が投下資本の生産力による収益ではなく、資産の値上りにより毎年潜在的に発生している増加益であり、しかもそれが資産の譲渡によつて顕在化したときに課税の対象とされており、期間の計算に親しまないことによる。したがつて、右にいう資産の取得に要した費用とは、資産取得のために直接必要とした費用、つまり原価性の認められるものであり、設備費及び改良費は資産の価値を増加させるために支出されたものであり、右の費用からなる取得費はいずれも当該資産の客観的価額の一部を構成する性質を有するものである。それ故、借入金がたとい資産を取得するためになされたものであるとしても、借入金に対する利息は当該資産の客観的価額を構成するものとはいえず、資産の取得費には含まれない。

なお、所得税基本通達(以下、基本通達という)三七-二七が事業用資産取得のための借入金利息について全額につき必要経費あるいは取得費として算入することを認めているのは、事業用資産については資産使用の目的からして法人と自然人を区別すべきでないとして法人税の場合に準じた取扱いを認めたに過ぎず、また基本通達三八-七は自然人の非事業用資産取得のための借入金利息についても、なるべく事業用資産取得の場合の取扱いと異なることを避けるために、非事業用資産が実際に使用に供された場合には、右資産取得のための借入金の利息のうち右資産の使用開始前のものについてのみ取得費に算入することとして、政策的にその調整を図つたものである。右通達の本来の趣旨は、非事業用資産を当初から実際に使用する目的を有せずに譲渡する予定で取得することは、通常は右資産の騰貴による利得を目的とする場合であるといえるから、このような場合に借入金利息を取得費として認めて保護する必要はないということであるが、使用目的の有無という主観的事情によつて借入金利息控除の有無を決定することは、集団的、大量的な処理を要する税務行政上好ましくないとの理由により、右通達は、客観的な使用の有無という事実によつて画一的に取扱うべきものとしたものである。したがつて、原告が主張するように当該資産が実際に使用されることなく譲渡された本件の場合には、右通達の適用はなく、譲渡所得に関する原則にしたがい、その取得のための借入金の利息は取得費には含まれない。

2  原告の昭和四五年分の所得税額の算定根拠は次のとおりである。

(一)所得金額

(1) 総所得 一五〇七万一五六〇円

(2) 分離短期譲渡所得 一〇二八万六五九〇円

(二) 所得金額から控除される金額 一〇八万二五〇〇円

内訳(生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除)

(三) 課税所得金額

(1) 総所得一三九八万九〇〇〇円

(一)(1)から(二)を引いて一〇〇〇円未満を切捨てたもの。

(2) 分離短期譲渡所得 一〇二八万六〇〇〇円

(一)(2)につき一〇〇〇円未満を切捨てたもの。

(四) 算出税額((1)+(2) 一二一四万二一〇五円

(1) (三)(1)に対する税額 五八八万一九五〇円

(2) (三)(2)に対する税額 六二六万〇一五五円

(五) 申告納税額 一二一四万二一〇〇円

所得税額(算出税額)につき一〇〇円未満を切捨てたもの。

3  過少申告加算税の算定根拠は次のとおりである。

(一) 申告納税額 一二一四万二一〇〇円

(二) 予定納税額(第一、二期合計) 三二一万六四〇〇円

(三) 確定納税額(納付すべき税額)((一)-(二)) 八九二万五七〇〇円

(四) 原告が申告した確定納税額(納付すべき金額) 七〇万四八〇〇円

(五) 過少申告加算税 四一万一〇〇〇円

(三)から(四)を控除した額につき一〇〇〇円未満を切捨てたものの五パーセント、

四  被告の主張に対する原告の認否及び反論

1  被告の主張1(一)のうち(1)ないし(3)は事実は認めるが、(4)は争う。

原告は、別表二の(1)ないし(4)に記載のとおり(なお、減価償却費の計算方法は別表三のとおり)、昭和四五年度にパチンコ機械の入替により合計三五六万四三八二円の譲渡損失を生じている。したがつて、総所得金額は右譲渡損を控除した一一五〇万七一七八円になるべきところ、被告が右三五六万四三八二円の譲渡損を否認したのは、違法である。

2  同(二)のうち(1)、(2)の事実は認めるが(3)は争う。

原告は、カー・ホテルや飲食店(喫茶レストラン)を営む目的で、昭和四二年二月三日訴外谷卯之助から京都市北区上賀茂桜井町五の二所在の田四七〇平方メートルを代金一八三六万円で、同月一四日訴外池西治一郎から同町五の六所在の田五一六平方メートルを代金四〇二三万円で購入し(以下、本件売買という。また、右土地を本件土地という)、右営業の企画を進めていたが、本件土地を含む地域は住居専用地域に指定されたことが判明し、原告の右営業用建物の建築は不可抗力により不可能になつたので、昭和四五年四月一七日訴外杉林織物株式会社に本件土地を代金七〇六五万六三〇〇円で譲渡した。ところで、原告は本件土地購入に際し、福徳相互銀行京都支店から六〇〇〇万円を借入れていたが、右借入金の右譲渡時までの利息は一一〇七万七八八二円であり、本件土地の取得費にこの利息金を加算すべきであるから、分離短期譲渡所得金額を算出するには、被告主張の取得費及び譲渡に要した費用六〇三六万九七一〇円以外に、さらに右利息金を控除すべきところ(そうすると△七九万一二九二円となる)、被告がこれを否認したのは違法である。

基本通達三七-二七は、現に特定の業務を営んでいる者が、当該業務の用に供される資産の取得のために借入れた資金の利子については、当該資産の使用開始前においても必要経費に算入し、課税対象から除外することを原則とし、例外的に当該利子を必要経費に算入せず、当該資産の取得価額に算入することを認めているものであり、基本通達三八-七は、通常の成行きに従い、順調に業務の開始ができる場合を前提として、当該固定資産の使用開始の日までの期間に対応する借入金の利子であつても、必要経費に算入された金額を控除した残額が、当該固定資産の取得費又は取得価額に算入されるということを定めているに過ぎない。したがつて、本件の如く不可抗力により開業することが不可能になり、その結果本件土地を転売せざるを得なくなつた場合に、このような事情を考慮せずに、右通達三八-七を画一的、機械的に解して、本件土地を使用したのでなければ、借入金利子を、本件土地の取得費に算入しない、とすることは、右通達の前文の「この通達の具体的な適用に当つては、……条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事業に妥当する処理を図るよう努められたい」との国税庁長官の訓示の趣旨に反するし、土地使用の有無により課税、非課税を安易に決定することは租税平等主義(租税の公平負担)に反し、ひいては憲法一四条一項にも違反することになる。もし借入金利子を取得費として認められないことが事前に予見でされば、原告は事業所得者であるから、借入金利息を事業経費として処理していたであろう。

また、担税力相応課税の観点からみても、資産の譲渡所得金額は当該資産の客観的価額とは無関係に、当該資産の現実的な譲受価額と譲渡価額との差額を基準として算定すべきであり、当該資産の取得費として所得税法三八条一項が定める「その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額」にいう「資産の坂得に要した金額」の意味を資産取得のために直接必要とした費用に限定せず、資産の取得のための借入金に対する支払利息も右の中に含まれていると解すべきである。

3  被告の主張2のうち(二)の事実は認め、その余は争う。

4  同3のうち(二)、(四)の各事実は認め、その余は争う。

第三証拠<省略>

理由

一  請求原因1の事実(本件更正処分、本件賦課決定処分及び裁決がなされた経過とその内容)については、原告が本件審査請求をした日を除き、当事者間に争いがなく、<証拠省略>によれば、原告が本件審査請求書(昭和四七年一月一五日付)を提出したのは昭和四七年一月一七日であることが認められる。

二  原告は、本件更正処分につき、所得を過大に認定した違法がある旨主張するので、この点についての被告の主張を検討する。

1  原告の昭和四五年分の総所得金額について

(一)被告の主張1(一)のうち(1)ないし(3)の事実は当事者間に争いがない。

(二)  そこで、原告が主張するパチンコ機械の入替による譲渡損失の有無につき判断するに、<証拠省略>を総合すると、原告は、昭和四五年分の所得税の確定申告に際し、確定申告書(<証拠省略>)の一面(表面)の総所得金額欄に総合譲渡所得として「△三五六万四三八二円」と記入しておきながら、同申告書の二面には分離短期譲渡所得として「宅地」「北区上賀茂」(本件土地を指すものと解される)と記入し、同部分の金額欄の記入は空白にしであるものの、総合課税の譲渡所得金額欄に「△三五六万四三八二円」と記入し、分離短期譲渡所得金額欄の空白部分から右総合譲渡所得金額の「△三五六万四三八二円」に向けて矢印をつけ、あたかも分離短期譲渡所得が△三五六万四三八二円であるかのような記載をなしたこと(原告は、右「矢印」の部分について成立を否認し、証人洪仁卓(原告が加入している在日本朝鮮人京都府商工会の商工部長で、原告の税金の申告について助言をし、その手続を代行するなど実質的に原告の代理人の役割を果していた)はその証人尋問において、自分は右申告書(<証拠省略>)のうち提出税務署記載欄の「上京」を除く全部と、二面のうち数字(以上いずれも青インキ)を記載したが、二面の「宅地」「北区上賀茂」と矢印(以上いずれも黒ボールペン)は記載していないと述べているが、同証人は他方一面の「上京」(黒ボールペン)はその事務員が書いたと述べており、これと矢印とは同色であり同種のボールペンで記載されているから、この点につき反証のない本件にあつては、右矢印も原告又は原告に代つて右書面を作成した洪仁卓の指示に基づいて右事務員が記載したものと推認するのが相当である)、そこで、上京税務署の調査担当者が前記洪仁卓にその説明を求め、右申立書記載の金額に関する明細書の提出を促したところ、洪仁卓は本件土地についての譲渡所得の計算書(<証拠省略>)を提出し、譲渡損は六九万一一一二円であり「△三五六万四三八二円」の記載は誤りであつたと説明したこと、本件更正処分に対する異議申立書においては分離譲渡所得金額一〇六六万五二一〇円と過少申告加算税の取消を求める旨の記載があるのみで、総合所得(譲渡所得)金額についての取消を求める旨の記載はなく、また、審査請求書においては、(趣旨)として譲渡所得金額三五六万四三八二円の金額の取消を求める旨の記載があるが、(理由)欄には右取消を求める根拠が全く記載されていないため、裁決においても譲渡損失(原告が本訴において主張するパチンコ機械の入替による譲渡損失)が発生していないことにつき当事者間に争いがないとして処理されていることの各事実が認められ、証人洪仁卓の証言中右認定に反する部分はにわかに信用できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

さらに、原告は別表二記載のとおりの譲渡損が発生していると主張し、証人洪仁卓もこれに副う旨供述するとともに、減価償却費の計算も別表三のとおりに行なつた結果三五六万四三八二円という金額が算出された旨述べているけれども、右計算方法には期間の算定や数字の取扱いに一部間違い(同表(3)の部分)があるうえに、<証拠省略>を総合すると、パチンコの機械の購入時期、単価、様式の点で原告の右主張は取引の実情や、警察への届出、仕入先の帳簿と合致せず、また、<証拠省略>によれば、原告は昭和四五年分以外の前後二年間はいずれも譲渡損としての申告をせず、経費として処理していたことが認められるので、合計処理方法においても一貫せず(なお、証人洪仁卓は、原告が昭和四四年七月に単発式のパチンコ機械を連発式のそれに切換えたため一時に多量の新品を購入したので、昭和四五年分において譲渡損の扱いをすることにした旨供述するが、<証拠省略>によると、洪仁卓の関与している在日本朝鮮人京都府商工会の会員でパチンコ店を経営している納税者は、昭和四四年分から同四六年分までの各所得確定申告において、パチンコ機械の入替による譲渡損につき総合譲渡欄に計上するか、事業所得の経費として控除するか、その方法において一貫していることが認められるので、証人洪仁卓の右供述もにわかに信用できない)、結局、別表二のとおり原告において譲渡損が発生している旨の証人洪仁卓の証言は信用できず、他に原告の右主張を認めるに足りる証拠はない。

(三)  以上によれば、原告の昭和四五年分の総所得金額は一五〇七万一五六〇円ということになる。

2  原告の昭和四五年分の分離短期譲渡所得金額について

(一)  被告の主張1(二)のうち(1)、(2)の事実は当事者間に争いがない。

(二)  原告は本件土地を取得するために借入れた資金の利息一一〇七万七八八二円を取得費として分離短期譲渡所得金額を算出する際に控除すべきであると主張するので判断する。

譲渡所得に対する課税は、資産の騰貴によりその所有者に帰属する増加益を所得とし、その資産が所有者の支配を離れて他に移転する際に顕在化する右増加益を清算して、これに課税する趣旨のものであるから、純所得に対する担税力に応じた課税の実現のためには、右清算にあたり、資産の取得に要した一切の費用を収入金額から控除するのを原則とすべきであろう。

しかし、他方、回帰的に発生する大量の事務を迅速に処理しなければならない税務行政においては、事務処理の基準について客観性と画一性が要請され、税法もこれを無視することができないのであつて、かかる観点から、現行(本件課税当時を含む)所得税法三八条一項は譲渡所得金額の計算上収入金額から控除すべき取得費は「その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。」と規定し、取得費とすべきものの範囲を限定的に定めているものと解される。

したがつて、借入金利子を取得費として取扱うためには借入金利子が右規定に該当することを要するところ、借入金利子は、その性質上、設備費や改良費に該当しないことは言うまでもなく、「資産の取得に要した金額」という文言が通常意味する範囲においてこれに含まれると解することもできない。ちなみに、租税特別措置法施行令(現行)二二条の八第八項一号は「土地の取得……に要する費用の額……並びにこれらの費用に充てるための借入金の利子の額……」と規定して取得に要する費用とその費用に充てるための借入金利子とを概念的に区別して扱つており、このことは所得税法の文言の意味を理解する上において参考になるものと思料される。

してみると、仮に、原告においてその主張のとおりの利息金(借入金利子)の負担が生じたとしても、本件分離短期譲渡所得金額の算出につき右金額を控除しなかつたことに違法はない。

なお、基本通達三七-二七が「業務の用に供される資産の取得のために借り入れた資金の利子は、当該業務にかかる各種所得の金額の計算上必要経費に算入する。ただし、当該資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額については、当該資産の取得価額に算入することができる。」とし、基本通達三八-七が「固定資産の取得のために借り入れた資金の利子のうち、当該固定資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額は、業務の用に供される資産にかかるもので基本通達三七-二七により当該業務にかかる各種所得の金額の計算上必要経費に算入されたものを除き、当該固定資産の取得費または取得価額に算入する。」としており、税務行政上右同様の取扱いをしていることがうかがえるが、基本通達三七-二七は、法人税とのバランスを考慮して、自然人の事業用資産取得のための借入資金の利子を必要経費又は取得費として取扱うことを承認している趣旨であり、基本通達三八-七は、事業用資産取得の場合とのバランスを考慮して、非事業用資産についても現実に使用に供されたときには、右資産の取得のための借入金の利子のうち右資産の使用開始前のものにつき取得費に算入する取扱いをなすとともに、転売による利益を得る目的(投機目的)で固定資産の譲渡が行われるときは右恩恵に浴させない取扱いをする趣旨であると解されるので、租税負担の公平という見地から右取扱いが理解できないわけではないが、前記のとおり、借入金利子を取得費として取扱うことの法令上の根拠には疑問があり、まして、原告が主張するように、当該固定資産を自ら使用しないで転売した場合にまで拡大して右通達を適用すること(この場合には右通達に「使用開始の日まで」とある部分を「転売する日まで」と読み替えなければならない)は到底是認できるものではない。

してみると、本件土地が原告において使用に供されることなく譲渡されたことの明らかな本件においては、右資産取得のための借入資金の利子につき、これを取得費の一部とみて収入金額から控除することは許されない。

また、右のような取扱いが事前に明らかにされていたとしても、原告において借入金利息をパチンコの事業経費として処理することが可能であつたわけではない。けだし、原告は本件借入金をパチンコの事業用資金として借入れたものでないことは原告の自認するところであるからである。

(三)  したがつて、原告の昭和四五年分の分離短期譲渡所得金額は一〇二八万六五九〇円ということになる。

3  以上によれば、原告の昭和四五年分の総所得金額は一五〇七万一五六〇円、分離短期譲渡所得金額は一〇二八万六五九〇円であると認められるところ、右と同金額の認定をした本件更正処分(前記のとおり本件裁決により一部取消された後のもの)は違法ではない。

三  次に賦課決定処分について検討する。

1  原告の昭和四五年分の所得税額を算定するに、被告の主張2のうち(二)の事実は当事者間に争いがなく、同(一)の事実が被告主張のとおりであることは先に認定したところであるから、課税所得金額は、総所得が同(三)(1)のとおり、分離短期譲渡所得が同(2)のとおりになるところ(端数計算については国税通則法一一八条を適用)、これに所得税法附則(昭和四五年法律第三六号)三条二項一号、租税特別措置法(昭和四八年法律第一六号による改正前のもの)三二条、同施行令二一号二項、国税通則法一一九条を適用すると算出税額は同(四)のとおり、申告納税額は同(五)のとおりとなる。

2  更に、過少申告加算税につきみるに、被告の主張3のうち(二)、(四)の各事実は当事者間に争いがなく、同(一)の事実が被告主張のとおりであること(したがつて、同(三)も被告主張どおりになる)は先に認定したとおりであるから、これに、国税通則法六五条一項を適用すると過少申告加算税は同(五)のとおりとなる。

3  以上によれば、本件賦課決定処分(前記のとおり本件裁決により一部取消された後のもの)も違法ではない。

四  結論

よつて、原告の本訴各請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 上田次郎 孕石孟則 松永眞明)

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